第1回日本在宅医療連合学会
2019年7月14日~15日開催
在宅医療における医療の質の評価指標に関する意識調査
~ 医師・看護師は、何を重視して在宅療養を支援しているのか ~
荒井 康之(1,4 鄭 丞媛(2 井上 祐介(3 太田 秀樹(1 鈴木 隆雄(4
1)医療法人アスムス 生きいき診療所・ゆうき
2)国立長寿医療研究センター 老年社会科学研究部
3)岡山県立大学 保健福祉学科
4)岡山県立大学 保健福祉学科
【目的】
これまで、医療の質に関する研究が多数行われてきたものの、その多くは病院の医療を対象にしたものであり、在宅医療の質に関する研究は未だ十分に行われていない。本研究では、在宅医療の質を評価する指標の開発に向けて根拠を得ることを目的とし、在宅医療に従事する医師・看護師が、在宅医療に何を重要と意識しているかを調査した。
【方法】
先行研究の検討および在宅医療従事者との検討会を通じ、在宅医療の質を評価しうると考えられる45項目を抽出し、調査票を作成した。この調査票を全国在宅療養支援診療所連絡会および全国訪問看護事業協会の会員施設の計1101か所に郵送し、45項目それぞれについて、在宅医療の質を評価する上で重要と考えるかを [とても重要である(5点)]~[全く重要ではない(1点)]の5段階の尺度で調査した。
【結果】
539施設(回収率:49.0%)から、医師358人、看護師131人の回答を得た。医師・看護師が在宅医療の質の評価に重要と考えた項目は、患者・家族との信頼関係(平均点数 医師/看護師;以下同 4.87/4.96)、円滑な多職種連携(4.79/4.90)、患者の排泄管理(4.78/4.94)、患者・家族とのコミュニケーション(4.79/4.91)、介護疲弊の把握(4.78/4.87) 円滑な病診連携(4.77/4.86)、患者の不安への支援(4.73/4.93)、介護者の不安への支援(4.70/4.93)等であった。生命予後 (3.04/3.73)、在宅看取り率(3.41/3.81)、夜間休日の緊急対応 (3.42/3.89)は、相対的に重要度が低かった。
【考察】
在宅医療に従事する医師・看護師は、従来の医療の質の評価で重視されている治療結果よりも、患者・家族との信頼関係や療養・介護に関する不安感・負担感の軽減等を意識し、多職種連携および病診連携による支援を重視していた。このことから、在宅医療の質を評価する際には、従来の医療の質と同様に評価することは困難であり、むしろ患者や家族のwell-beingに関する項目や地域の連携体制の項目等を含めて幅広く検討することが必要であると考えられた。
<受賞についてのコメント>
指導教員の鈴木隆雄先生をはじめ、共同研究者の鄭丞媛先生、井上祐介先生、太田秀樹先生には、多々ご指導・応援をいただきました。受賞を励みに、今後もコツコツと、在宅医療に関する研究を進め、社会に発信していきたいと、改めて思いました。